第4回/5月19日 地球の内部
「地球の内部はどうなっているのだろうか?」
前々回、ジオイドの話をした。
ジオイドは「地球表面の重力方向に垂直な曲面で、平均海水面に一致するもの」だけれど、このジオイドの表面には凹凸がある。
→ 重力の方向が、地球楕円体の法線と一致しない。
つまり、地球の内部には物質(密度)の不均一があるということになる。
地球上での重力(γo)は、
万有引力 : と 遠心力 :
→ 遠心力ついての説明は前回話した。
の合力なので、

とあらわすことができる。これが、計算で求められる標準重力である。

もしも地球内部の物質が一様であるならば、この計算から求めた標準重力と、実測から求めたある地点での重力の値とは同じになるはずである。ところが、ある地点での重力の実測値を g として、
- 高度(フリーエア)補正 : ジオイドからの海抜高度を補正
- 地形補正 : 高いところをなくし、低いところを埋める
- ブーゲ補正 : ジオイドと測定点との間の岩石を取る
という補正を加えた値、つまり重力の補正値(go")を求め、これを標準重力と比較すると、一般に大陸において実測値が小さく、海洋において大きくなることが知られている。つまり、

において、
海洋では : (重力異常が正 ← 地下が重い)
大陸では : (重力異常が負 ← 地下が軽い)
である。
→ 大陸は、ジオイド面より下の部分の密度が海洋よりも小さい。
大陸 : 軽い物質からできている → 花崗岩質「大陸地殻」
海洋 : 重い物質からできている → 玄武岩質「海洋地殻」
大陸地殻も、海洋地殻も、重力に対して安定しているように見えるから、大陸でも海洋でも、地下のある深さのところで、それより上にある部分の重さが同じになっているはず。
地殻の構造は重力的に釣り合っている → 「アイソスタシー」

上の図で、ρの密度を持つ部分を大陸地殻、ρoの密度を持つ部分を海洋地殻とすると、 地下のある深さで見れば、その上にある大陸地殻の高さ(h)と海洋地殻の高さ(h')にそれぞれの密度をかけたものは、どの地点でも等しくなるはず。
大陸地殻と海洋地殻を併せて地殻と呼び、これは地表からモホロビチッチ不連続面(モホ面)までの部分に相当する。
大陸地殻 : 平野部で 20 - 30 km、山岳部で 30 - 70 km ぐらい
海洋地殻 : 5 - 10 km ぐらい
実際に人間の掘った距離は、地表からせいぜい 13km ぐらい(ソビエトによる掘削)。
→ では、地球の内部を「見る」にはどうしたらいいだろう?
地球は光を通さないから、地球の中を直接「見る」事はできないが、人体の中をX線で「見る」ように、地震波を使って地球の中を「見る」事ができる。 X線は直進するが、地震波は地球の中を屈折して進むことを利用する。
→ 伝播速度が場所によって違う(光の屈折と同じ)。
- 地震波には次の二種類がある。
-
- 1. P波(Primary Wave)・・・・・地震計で最初に現れる
- - 波の進行方向と同じ方向に振動する。
- - 固体・液体・気体のいずれの中でも伝わる。
- - 地表附近の岩石中を伝わる速さは 5 - 7 km/秒
-
- 2. S波(Secondary Wave)・・・・・P波のあとに現れる。
- - 波の進行方向と直角方向に振動する。
- - 固体中しか伝わらない。
- - 地表附近の岩石中を伝わる速さは 3 - 4 km/秒
これら以外にも、表面波(ラブ波・レイリー波など)がある。
※参考頁 : http://www3.to/seismology/ ・・・ 地震波をアニメーションで見られます。
地球上のある地点で起こった地震を地球各地の地点で観測すると、地震波が伝わらない場所があることがわかった。

P波は屈折して伝わり、S波は103°よりも遠いところに伝わらない。つまり、地球の中心附近には、S波を通さず、また、P波を屈折させるような物 → 「液体」があるらしい、という事がわかった。

地震波の伝播とその解析からわかっている地球の内部構造。
■ 宿題 ■
- - 問 1 -
- スカンジナビヤ半島では、氷河時代以降 275m 陸地が上昇した。当時、ここにはどれだけの厚さの氷河があったかを求む。但し、マントルの密度は 3.3g/cm3 とする。
- - 問 2 -
- 地震波の伝わる部分が均質な構造であるとして、観測点と震源の間の距離を D km 、初期微動継続時間(P-S時 : P波が到達してから、S波が到達するまでの時間)を t 秒とすると、どのような関係式が成り立つか。
また、P波、S波速度がそれぞれ 5km/秒・3km/秒、P-S時が 6 秒であるとき、震源までの距離を求めよ。